3 – 1 テナントと戸建ての違い

眼科クリニックの開業には、テナント開業と戸建開業の選択肢があります。テナント開業には、既存の建物に入居する場合と、新設される医療モールがあります。一方、戸建開業は、土地を購入して建設するか、土地・建物を借りる「建て貸し」があります。

テナントと戸建てのメリット・デメリット

3 – 2 開業地選定から物件契約までの流れ

STEP1:ヒアリング

クライアントのニーズを把握するためにまずはヒアリングを行います。物件(土地)の提案に必要な情報を収集するだけでなく、先生の本音をくみ取ったり、本人が気付いていない潜在的なニーズを引き出すことが目的です。多角的な視点で物件(土地)を探しクライアントの希望にマッチした提案を行うためにも、商談時のヒアリングでいかに情報を引き出せるかが重要です。

必ず確認する5つの質問!
  1. 希望物件(土地)の有無
  2. 希望の物件条件
    間取り・アクセス・駐車場の必要性(その中での特に優先させたい条件を伺う)
  3. 希望のエリア
    住所、立地、最寄駅など。第1希望・第2希望を伺う
  4. 希望の開業時期
  5. 予算
その他よく聞く質問
  • 自宅と開業予定地との距離
  •  薬は院内処方が院外処方か
  •  開業時期のリミット
  •  紹介出来る大学病院や基幹病院の有無
  •  好きな街の雰囲気や合っているお土地柄はあるか

その他注意事項

・開業候補地で既に別の先生が開業計画を進めている場合もあるため、バッティングしないように事前確認としてリィツ社内開業情報を管理しているCEO BP Room Startup Labに問い合わせをしましょう。

STEP2:診療圏調査

STEP1のヒアリングで、先生の希望エリア(住所)がわかり次第診療圏調査を行います。
診療圏調査の詳細は Chapter3-3 診療圏調査 を確認しましょう。

STEP 3:建築業者・仲介業者への連絡・マイソクの選定

1. 建築業者・仲介業者への連絡

  • 建築業者や仲介業者(不動産会社・薬局)に連絡し、事前ヒアリングした条件を伝える。
  • 希望に合う物件情報を紹介してもらう。

2. 物件情報の収集方法

  • 医療モール開発事業を行う薬局関連業者から情報を収集
    • ココカラファイン
    • マツモトキヨシ
    • スギ薬局 など
      → 新しく建てられる医療モールの物件情報を提供してもらえる。
  • 既存のビルを探す場合
    • 街の不動産屋に相談
    • クリニックに適した空きテナント情報を入手

3. 物件の選定

  • 紹介された物件をすべて提案するのではなく、先生の希望に合わない物件は除外する。
  • 事前ヒアリングで得た情報を基に、先生のニーズに適した物件を厳選する。
  • 提案の質を高め、より良い選択肢を提供できるようにする。

物件のチェックポイント

1. オーナー情報(重要)

  • オーナーの対応
    • 対応が極端に厳しい、または不自然な要求をするオーナーには注意。
    • 契約後のトラブルを防ぐため、人柄や対応姿勢を事前に確認。
  • 過去のトラブル事例
    • 契約内容が細かすぎて契約者が嫌がるケース。
    • 契約更新時に不自然な契約変更を要求され、退去を余儀なくされたケース。
    • 医療モール計画が途中で一般住宅向け賃貸に変更、または計画自体が消滅したケース。

2. 面積・坪単価(東京都の場合)

  • 面積の目安
    • OPEなし:20〜30坪以上が必要。
    • OPEあり:60坪以上あるとゆとりのある広さ。
      • 一般的な目安
        • 40坪:狭め。
        • 50〜60坪:ちょうど良い広さ。
        • VIT施設:70坪以上が理想的。
  • 間取りの確認
    • 経営理念やクリニックのコンセプトに合う設計が可能かをチェック。
  • 坪単価の目安
    • 地域によって異なるため、ネットでのリサーチが必須。

3. 築年数

  • 建物の劣化リスク
    • 築年数が経過するほど、設備の老朽化や劣化の進行が懸念される。
    • 修繕工事や設備交換が必要になる可能性が高まる。
  • 設備の交換履歴を確認
    • 物件の設備更新の履歴を調査し、劣化状況を推測。
    • 交換や修繕のコストを事前に試算しておく。

4. 間取り

  • クリニック運営に適した間取りか
    • 経営理念・コンセプトに合う間取りが確保できるかを確認。
    • 設備の配置や患者動線を考慮した設計が可能か。
    • 診療スペース、受付、待合室、検査室などのレイアウトが適切か。
Point!

マイソクには書かれていませんが、提案の精度を高めるために以下の内容も事前に調べておくことがおすすめです。

  • 近隣の眼科クリニックと連携出来る医療機関関
  • 最寄り駅および主要駅までの所要時間
  • 院外処方出来る薬局が近くにあるか

STEP 4:クライアントへ物件(土地)のご提案

提案時のポイント
  1. 提案する物件は3〜5つに絞る。
    選択できる絶対数が多くなると、人は選択すること自体をやめてしまうという行 動心理(ジャム理論)があります。選ぶ自由があることは理想ですが、そこから1つを選択するという意思決定のために、選択肢を絞っておきましょう。
  2. クライアント目線で話す
    ❌ この物件は広い(主語は「物件」になっている)
    ⭕️  先生はスペースを自由に活用できる(主語が「先生」で、先生目線になる)
    ❌ この物件は駅から徒歩5分(事実だけを伝えている)
    ⭕️ この物件は駅から徒歩5分で通院に便利なので、集患が見込める(「患者さん」目線のメリットも伝える)
  3. 物件のメリットとデメリットを両方伝える
    あえてデメリットも伝え、物件に対する評価を聞き出すことで、クライアントの要望やニーズをより細かく整理しながら理想の物件を探していきます。

STEP5:内見の同行

テナントの場合はココを確認

  1. B・C工事
    大型の建物では、ビルオーナー指定の業者(B工事業者)が工事を行う場合があり、工事費用が高額になることがあります。事前に工事区分表を確認しておくとよいです。
  2. 空調設備
    天井高が低い、天井裏スペースが狭い物件では、エアコン設置位置が限定されることがあります。築年数の経った物件では特に注意が必要です。エアコンの移設・増設には追加費用が発生します。
  3. 電気設備
    医療機器の使用に必要な電気容量があるか確認をしましょう。契約アンペアは出来れば70~80A必要です。医療機器総消費電力を計算して内装工事会社と打ち合わせをしましょう。容量不足の場合、増設費用は30〜100万円程度です。
その他 内見時に確認すると良いこと
  • 看板設置の可否
  • バリアフリー
  • 建物内の設備
  • 出入口のわかりやすさ
  • 換気設備
  • 消防設備
  • 同じビル・施設内のテナント
  • エレベーターは導入予定の器械が入る広さがあるか
新築物件の場合はココを確認
  1. B・C工事
    テナントの場合と同様に確認をします。
  2. 医療モールに入る予定の科目
    医療モールには薬局以外に複数の科目が入ります。眼科と連携しやすい内科や耳鼻科が入居予定か確認するとともに、どんな科目が入るか確認しておくとよいでしょう。
  3. 医療モールの方針
    医療モールの方針や独自のルール(休診日の指定など)がある場合、自院の運営に支障がないか詳細を確認する必要があります。
  4. 障害物
    建物が出来上がったと想定して、サインが見やすい位置にくるかどうか、周辺に障害物がないかどうか確認しましょう。

STEP6:契約

3 – 3 診療圏調査

診療圏調査は、開業予定地での見込み患者数を推定し、クリニックの収益性を見極めるための重要な調査です。

  • 目的
    見込み患者数を推定し、開業地のポテンシャルを把握します。金融機関への融資申請の際も、診療圏調査の結果が審査資料として必要です。
  • 調査方法
    • 申請:RITZ ContentsのCollaboflowから診療圏調査作成依頼書に必要事項を記入し、HQへ申請します。
    • 結果の受領:HQから診療圏調査の結果をメールで受け取ります。
    • 現地調査:診療圏調査の結果だけでなく、現地での人や車の流れ、競合クリニックの集患力、最寄り駅からのアクセス状況を確認します。
  • 診療圏調査の改善
    • 競合の強度
      診療圏調査では、エリア内の患者数を競合クリニックで按分し、来院患者数の予測を算出します。結果は均等に按分されますが、実際には競合クリニックの集患力は一定ではありません。例えば、「手術件数が非常に多い」や「口コミでの評価が高い」などの要因がある場合、競合度が高くなります。より正確な診療圏調査を行うには、エリア内の患者数を均等に按分するのではなく、各競合の強度を設定し、その強度に応じた比率で按分することが必要です。
    • 人口世帯特性
      診療圏によって、年代や世帯の構成が異なることがあります。以下のような、エリアの人口特性に応じたサービスにより、来院患者数の増加が見込めます。
      ◼︎子供や若年層が多いエリア
      ・明るい内装を導入
      ・小児眼科の設置を検討(医師の専門性による)
      ・ICLの検討

      ◼︎高齢者が多いエリア
      ・バリアフリー対応の内装
      ・送迎サービスの実施
      ・白内障手術に重点をおく
  • 「夜間人口」と「昼間人口」の差
    診療圏調査では国勢調査の人口を使用して患者数を割り出すことが一般的ですが、通常、この場合の人口は「夜間人口」を指しています。
    夜間人口は居住地における人口の統計であるため、住宅地で開業する場合の診療圏調査には最適です。
    しかし、就業者は日中、勤務先へ移動していることが多いため、駅前やオフィス街など、居住人口の少ない開業予定地について夜間人口を用いた診療圏調査を実施しても、思うような来院患者数にならないことがあります。このような事態を回避するためには、「昼間人口」を用いた診療圏調査を行う必要があります。

3 – 4 承継開業

承継開業とは

承継開業は、「親族内承継」と「第三者承継」の2つに分けられます。

  • 親族内承継
    • 現役医師の親族(子供や兄弟)がクリニックを引き継ぐケース。
    • 今までの方針や経営理念をそのまま継承しやすい。
    • 仲介手数料が不要な場合が多いが相続税がかかる可能性もある。
  • 第三者承継
    • 親族以外の第三者がクリニックを引き継ぐケース。
    • 経営方針の自由度が高いため、新しいスタイルで運営できる。

新規開業と承継開業のメリット・デメリット

承継開業の相談を受けた際の対応

クライアントから承継開業の相談を受けた際、自社で契約を進めるのではなく、M&Aの専門会社に引き継ぐ手続きを行います。

Point!

M&Aでは売り手、買い手双方に公平性を保つため正しい資産評価を実施する必要があります。しっかりと契約書を交わしていない場合、先生同士のトラブルに発展するケースも少なくないため、リスク管理のためにも専門の会社に引き継ぐことがクライアントの安心と信頼を得る事に繋がります。